レズ風俗法律相談Q&A『教えて!弁護士ばやし先生!』第五弾「風営の届出店(性風俗店)と無届店」

2022年10月25日

レズ風俗法律相談

レズ風俗レズっ娘グループ代表『御坊』が、風俗トラブルに強いグラディアトル法律事務所所属弁護士ばやし先生@_devilsadvocate)こと若林翔先生に質問していく法律相談Q&Aコラムです。

今回は、第一弾テーマ「風俗営業の届出」や第二弾「性風俗店へのスカウトや紹介の違法性」でも触れました「風営の届出店(性風俗店)と無届店」について、今回は、これまでの性風俗店やレズ風俗店だけでなく、男性キャストを女性のお客様に派遣する女性用風俗(いわゆる女風)についても含め、風営法、売春防止法、職安法それぞれの観点からお聞きしてみました。

目次

風営法の無届店は”風俗”なのか

シリーズ初回のコラムでもお聞きしましたが、やはり最近よくメディアで風営届出をしていないメンズエステなど違法”風俗”営業などといった無届営業店が摘発されたニュースを以前よりも目にします。

個人的には無届店は風俗店ですらないと思っています。

メディアでは、こういった無届店や違法店も含め“風俗”とされ

きちんと法律を守って納税もしっかりし、キャストやスタッフの福利厚生も考え、健全に営業している風営届出済の性風俗店もスティグマ化されているような気がするのです。

法律上、無届営業しているお店は、”性風俗店”(いわゆる風俗)に入るのでしょうか。

A:いわゆる風俗店(性風俗特殊営業)の定義は、後で詳しく述べますが、異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する業務です。そのため、このような営業を行っているお店は、いわゆる風俗店に該当します。ただし、いわゆる風俗店は、届出をしなくてはならないため、届出を出さないで、異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供しているお店は、違法な風俗店ということになります。

このような観点からは、風営法の枠組みのなかで営業していないことになるので、無届店はいわゆる風俗ではないと考えることもできます。

性風俗店(風俗)の定義

コラム第一弾「風営法の届出について」のおさらいとその補足として下記の質問をお聞きしてみました。

法律上の”性風俗店”(いわゆる風俗)の定義を教えてください。また、どういった経緯でこの法律が敷かれたのか、またどう改正されてきたのか教えてください。

A:いわゆる風俗は、法律上は、性風俗特殊営業と呼ばれます。

性風俗特殊営業にもいくつかの種類があり、たとえば

ソープランド

「浴場業(公衆浴場法(昭和二十三年法律第百三十九号)第一条第一項に規定する公衆浴場を業として経営することをいう。)の施設として個室を設け、当該個室において異性の客に接触する役務を提供する営業」(6条1号)。

ファッションヘルス(いわゆる箱ヘル)

「個室を設け、当該個室において異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業」(6条2号)。

デリバリーヘルス(デリヘル)

現在、このなかで新規で届出が出来る性風俗店は、1999年以降、デリヘルだけです。

「人の住居又は人の宿泊の用に供する施設において異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業で、当該役務を行う者を、その客の依頼を受けて派遣することにより営むもの」です(7条1号)。

いずれも性的好奇心に応じて「異性の客」に「接触する役務を提供する」ことが要件になります。

詳細については、以下の記事もご参照ください。

風営法制定の趣旨ですが、善良の風俗の維持と少年の健全な育成に障害を及ぼす行為の防止です(1条)。現在の風営法は昭和60年2月13日に制定されました。
その後、平成10年にはデリヘル店への対応のため、平成17年には外国人風俗嬢への対応等を目的に、平成23年には出会い系喫茶への対応のため、大規模な改正がありました。

風営の”無届”店はそもそもコンプライアンスの意識が低い

初回コラムではレズ風俗など同性間で性的サービスを行う業者には風営の届出は”今のところ”必要ないとされていることをご説明いただきました。

警察白書などによれば、風営の届出をしている性風俗店の割合は風営法に違反している事例は、無届店と比べ割合としてはかなり少ないように感じますがいかがでしょうか。

そもそもの問題として、性風俗営業を無届けで行う時点で違法です。

た、無届店では遵法意識そのものも低くなりがちなのではないかと思います。。

男性セラピストを派遣し女性のお客様に性的サービスをする女性用風俗(いわゆる女風)についても風営法は適用されますか?

A:男性セラピストを派遣し女性のお客様に性的サービスをする女性用風俗(いわゆる女風)についても風営法は適用されます。

さきほども説明いたしましたが、いわゆる風俗の定義として「異性の客」に「接触する」か否かがいわゆる風俗かどうかの要件ということになるので、男性が女性に接触する女性用風俗であっても、いわゆる風俗となります。

売春防止法について

性風俗店で働くことや利用することだけではなく、一部、レズ風俗で働くことやレズ風俗のご利用自体が、売買春ではないかという間違った解釈をされている方もおられます。

法律において”売買春の定義”について教えて下さい。また、どういった経緯でこの法律が敷かれたのか教えてください。

A:売春の定義は「対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交すること」です(売春防止法2条)。

売春防止法の趣旨は、売春が人としての尊厳を害し、性道徳に反し、社会の善良の風俗をみだすものであることにかんがみ、売春を助長する行為等を処罰するとともに、性行又は環境に照らして売春を行うおそれのある女子に対する補導処分及び保護更正の措置を講ずることによって、売春の防止を図ることです。

レズ風俗など同性間ではどう解釈されていますか?

A:(風俗店の)本番行為=(法律上の)性交=男女間のSEXと定義されているため

いわゆる本番が想定できないレズ風俗などの同性間では売買春にはなりません。

買う側、売る側、管理する側の法的リスクを教えて下さい。

A:買う側、売る側双方とも法律上は罰則がないだけで、売春防止法で禁止されています(3条)。
管理する側はもちろん法律で禁止されているうえ、罰則もありますので(売春防止法12条)、逮捕等の刑事事件化のリスクがあります。

また、売春行為は、違法なので、このような行為を行う店はコンプライアンスがしっかりしていないところが多いでしょう。そうすると、ぼったくり店だったり、恐喝まがいの行為が行われたりということもあります。

管理され働く側としても、きちんと報酬が支払われないなどのリスクもあるかと思われます
また、ほとんど、この制度が用いられることはないのですが、法律上は公衆の目に触れるような態様で売春をしてしまった女性に対しては補導処分も可能となります(売春防止法17条)。
補導処分は、6ヶ月の間、婦人補導院という施設に収容されて、更生のための教育を受けることになります。

風俗と売春防止法については、以下の記事もご参照ください。

女風についても売春防止法は適用されますか?

A:売春は、対価を得て不特定多数の者と性交する行為と解釈されるため、男性セラピストによる女性向け風俗であった場合「性交」自体は可能なので、対価を得て不特定の女性と性交していれば、売春防止法が適用される可能性はあります。

職業安定法について

第二回のコラムで、職安法上では、たとえ風営届出している性風俗店であっても「有害な業務」と定義され、勧誘や紹介、スカウトも違法だということを知りました。

無届店のキャストの勧誘や紹介、スカウトなどについて教えてください。

A:職安法上の有害な業務は、社会一般の道徳観念に反する業務であり、労働者保護、善良な風俗の保護という観点から判断されます。すなわち、その実態で判断されるわけです。そのため、届出の有無よりも、「社会一般の道徳観念に反する業務」といえるかが重要となります。

届出を出して適法に運営している風俗店ですら、裁判例上は有害な業務と認定されてしまっております。そのため、風俗店と類似の営業をしている店舗であれば、有害な業務と認定される可能性が高いでしょう。

また、無届営業の風俗店だとそもそも健全な営業がなされていない場合がほとんどですし、そもそも風営法の定めに従って営業していこと自体が「社会一般の道徳観念に反」しているともとらえられます。そのため、きちんと届出している風俗店よりも有害と判断されやすいとは思います。

性風俗店と職安法の有害な業務については、以下の記事もご参照ください。

最後に「新風営法届出済の優良風俗店」とは

私自身、レズっ娘クラブ創業(2007年5月3日)する前は

Webサイト制作業者として、10店舗以上の男性向け風俗店のサイト制作に携わっていたのですが、ほとんどの男性向け風俗店サイトが

”新風営法届出済”の優良風俗店

”安心や安全”や”健全”なイメージを掲げていました。

これは、それまで非合法だったデリヘルが1999年に風営法が改正され、合法化されたことが考えられます。※この1999年の風営法改正のものが新風営法と呼んでいたものです。

なお、レズっ娘クラブでは2007年5月3日から一度も男性のお客様のご案内はしておらず、完全なる同性同士の女性用風俗ですが、2007年の創業時から風営の届出を行っております。

今回、風営の届出をしていない無届店は本質的に違法であること、そして、無届店は”法的にも風俗(性風俗店)ですらないといえる”ということがわかりました。

さらに同じ女性用風俗のなかで、女性のお客様のもとに派遣される女風については、確実に性風俗店として風営の届出が必要で、男性向け風俗店と同じ法律が適用されることもわかりました。

また少なくとも風営法の届出をしている性風俗店と比べ

風営の無届店や違法店は、その代表者の善悪の倫理観というか

法令順守といった基本的なコンプライアンスの意識が低いということは明らかで

風営の無届店や違法店をご利用するお客様も在籍するキャストも

法的なリスクが及ぶということも安易に推測できます。

次回は、無届店を含む違法店に在籍するキャストや

無届店や違法店を利用するお客様側の

実際の法的なリスクについてお聞きしてみたいと思います。

御坊でした

・協力 グラディアトル法律事務所