レズ風俗法律相談Q&A『教えて!弁護士ばやし先生!』第七弾「ネット上の誹謗中傷」

2022年10月25日

レズ風俗法律相談レズ風俗レズっ娘グループ代表『御坊』が、風俗トラブルに強いグラディアトル法律事務所所属弁護士ばやし先生(@_devilsadvocate)こと若林翔先生に質問していく法律相談Q&Aコラムです。

第七弾となる今回は、今年7月に改正された侮辱罪の厳罰化、侮辱罪と名誉毀損罪などとの違い、今年10月1日から改正するプロバイダ責任制限法など、「インターネット上の誹謗中傷」についてお聞きしてみました。

侮辱罪のほか、名誉毀損罪、信用毀損罪、偽計業務妨害、威力業務妨害などとの違いとそれぞれの説明もご紹介します。

侮辱罪について

個室で1対1で侮辱されたは「公然」ではないですが、ネット上では「公然」となりたとえ匿名投稿であっても侮辱された場合は、侮辱罪が成立する可能性があります。

侮辱罪とは

侮辱罪とは、「事実を適示せずに、公然と人を侮辱する」罪です。侮辱罪が成立される場合、侮辱は公然と行われていなければいけません。

侮辱とは

「侮辱」というのは、人に対する侮辱的価値判断を表示することをいいます(大判大正15年7月5日刑集5巻303頁)。

事実とは

ここでいう「事実」とは、本当のこと(真実)という意味ではなく、出来事というような意味です。

たとえば、「Aさんは不倫をしている」というのは、事実を適示したことになります。一方で、「Aさんはふしだらだ」というのは、「ふしだら」というのは、出来事ではありませんから事実を適示したことにはなりません。

今回の侮辱罪厳罰化で何が変わったか教えてください。

大幅に刑罰が重くなった

侮辱罪厳罰化のきっかけ

平成31年(2019年)には、インターネット上の人権侵害に関する事件件数が平成24年以降5年連続で増えているということが国会でも指摘されていました(平成31年3月8日第198回国会法務委員会)。令和2年には、リアリティ番組に出演していた女子プロレスの選手がSNS上での誹謗中傷を苦に自殺する事件も起きました。このような「インターネット上の誹謗中傷が社会問題化している現状を踏まえて」(令和4年2月25日第208回国会法務委員会における古川法務大臣の発言)令和4年6月13日に刑法が改正され侮辱罪の法定刑が引き上げられました。

これまでの法定刑

これまでは、法定刑が「拘留又は科料」となっていました(刑法231条)。拘留とは、「1日以上30日未満」刑事施設に拘置する刑です(刑法16条)。科料とは「1000円以上1万円未満」の金銭を納付する刑です。

大幅に刑罰が重くなった現在の侮辱罪

令和4年7月7日以降は、「1年以下の懲役もしくは禁錮若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」となりました。刑罰に1年以下の懲役(禁錮)と30万円以下の罰金が加わっており、従来と比べて大幅に刑罰が重くなったといえます。


ネット上での発言が「侮辱罪」に当たり得るケース

侮辱罪は、事実(出来事)を適示しないものです。

そのため、インターネット上で「馬鹿」、「アホ」、「ブス」、「クズ」、「ゴミ」、「クソ」などと投稿したようなケースが挙げられます。

どのような言葉が侮辱罪に該当するか、以下の記事で実例を挙げて解説をしていますので、こちらもご参照ください。

侮辱罪にあたる言葉は?刑事告訴や損害賠償請求に役立つ実例30選!

名誉毀損罪について

投稿した内容が真実であっても嘘であっても、具体的に言及され、名誉を毀損されたという場合は名誉毀損罪が成立する可能性があります。

名誉毀損罪とは

名誉毀損とは「公然と事実を適示して、人の名誉を毀損」した場合に成立します。

名誉とは

「名誉」とは、「人の品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価」のことです(最大判昭和61年6月11日)。

毀損とは

「毀損」とはそのような社会的評価を低下させることです。

公然とは

「公然」とは、適示された事実を不特定又は多数の人が認識し得る状態をいうと解されています(大判昭和6年6月19日刑集10巻287頁)。

名誉毀損罪と侮辱罪との違い

侮辱罪との違いは、事実を適示するか否かであることは、前述しました。

また、名誉毀損罪が保護しているのは特定の人の「名誉」であるため、「東京」人や「九州人」といった不特定の集団の名誉を低下させるような場合は、名誉毀損罪は成立しません(大判昭和6年6月19日刑集10巻287頁)。

ネット上での発言が「名誉毀損罪」に当たり得るケース

名誉毀損がインターネットで問題になったケースとしては、以下のようなものがります。

・動画投稿サイトのコミュニティに対象者が洋物ロリ部門の愛好家であると投稿した事案(東京地裁平成25年7月19日)

・電子掲示板において対象者を風俗嬢であると投稿した事案(東京地裁平成29年3月16日)

信用毀損罪について

虚偽の投稿をされ、信用を毀損された場合、信用毀損罪が成立する可能性があります。

信用毀損罪とは

信用毀損罪は「虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損した」場合に成立します。「信用」とは、「人の支払い能力又は支払い意思に関する信用」(大判明治44年4月13日刑録22輯854頁)をいうのが一般的ですが、これにとどまらず、商品の品質に信用も含むとされています(最判平成15年3月11日刑集57巻3号293頁)。

虚偽の風説の流布とは

虚偽の風説の流布とは、事実のうち少なくとも一部が客観的真実に反しているものを不特定多数の者に伝播することをいいます。

偽計とは

「偽計」とは人を欺き、又は人の錯誤又は不知を利用することをいいます。

名誉毀損罪と信用毀損の違い

 信用毀損罪では、対象となる者は、自由公正な競争の世界にあえて入った者であるため、虚名(真実でない評判)を保護する必要性がありません、そのため、適示された事実は、虚偽でなければなりません。

ネット上での発言が「信用毀損罪」に当たり得るケース

ある飲料メーカーの販売する商品に異物が混入していたという投稿をインターネットで行った場合、信用毀損罪が成立しえます(前掲平成15年判例、ただしもととなった事件は、店頭で申し出たものです。)。

偽計業務妨害罪について

虚偽の投稿をされたり拡散され、業務を妨害されたという場合は、偽計業務妨害罪が成立する可能性があります。

偽計業務妨害とは

偽計業務妨害とは「虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて」人の業務を妨害した場合に成立します(刑法233条)。

偽計業務妨害罪と「威力業務妨害罪」の違い

 威力業務妨害は「威力を用いて人の業務を妨害した」場合に成立します(刑法=条)。両者の違いは「威力」を用いているか「偽計」を用いているかという点になります。

威力とは

「威力」とは、人の自由意思を制圧するに足る勢力をいいます(昭和28年1月30日刑集7巻1号128頁)。

ネット上での発信が「偽計業務妨害罪」に当たり得るケース

インターネット上で、「あるバス会社の運転手が癇癪持ちなので、用心べきである。」というような投稿すれば偽計業務妨害罪が成立し得ます(大判昭和35年2月18日刑集14巻2号148頁、ただしもとになった事件はインターネット上での行為ではありません。)。

情報開示請求について

改正プロバイダ責任制限法が、2022年10月1日に施行されます。これにより、ネット上で発生した誹謗中傷等の情報開示請求のハードルが以前より下がります。

プロバイダ責任制限法

プロバイダ責任制限法とは、プロバイダ等の損害賠償責任の制限、及び、発信者情報の開示請求等、及び発信者情報開示命令事件に関する裁判手続について定めた法律です。

発信者情報開示とは

発信者情報開示とは、ネット上のいわゆる誹謗中傷について、そのような投稿等をした人物を特定する請求です。

従来の方法では、まず、サイトの管理者(twitter社など)に対して、IPアドレス等の開示の仮処分を請求します(一段階目、なお、管理者が任意に開示に応じる場合もあります。)。その後、接続プロバイダに対する、投稿者の情報の開示を請求します(二段階目)。

なお、令和3年プロバイダ責任制限法の改正により、令和4年10月1日以降は、「発信者情報開示命令に関する裁判手続」が追加されました(プロ責法8条)。これによると、発信者情報の提供命令(改正15条1項)・開示命令をコンテンツプロバイダ、経由プロバイダに同時に行うとともに、接続プロバイダに対して消去禁止命令(改正法16条1項)を行うことにより手続が一本化されます(改正10条7号)。

開示を行うためには、権利侵害の明確性(法3条)が必要となります。権利侵害の明確性は、上述した、名誉毀損や侮辱のほかにプライバシー侵害等があったと主張することになります。また、その投稿が対象者について言及していると、一般の読者の普通の読み方からわからなければなりません。これを同定可能性といいます。

伏字やイニシャル等で特定を免れる内容について

発信者情報開示においては、同定可能性が必要になります。

インターネット上の投稿では、よく伏字やイニシャル、同音異字を用いて、本人や書き込み内容を特定しづらくしている場合があります。しかし、そのような場合でも文脈や投稿内の情報から一般的な読者を基準として、誰が何について言及しているかわかる場合であれば、対象者が特定されているということができます。

ーちなみに以前、『漫画のモデルになったレズ風俗店』という悪質な投稿に対して、情報開示請求をしたところ、『漫画のモデルになったレズ風俗店』=当グループのことだと判断されました。

ネット上で発言するときに気を付けるべきことを教えて下さい。

その投稿によって他人の権利を侵害することがないかよく考えて投稿を行うべきです。

インターネットでは匿名で投稿できるサービスも多いですが、その投稿を匿名でなかったとしたら行うことができるか、できないとしたらその理由は何かをよく考えて責任を持った投稿を心掛けることが一番かと思います。

ーありがとう御座いました!

まとめ

「インターネット上の誹謗中傷」問題については、グラディアトル法律事務所でもこれまでも特に相談件数が多かった事案だそうです。

2018年2月に上梓させていただいた拙著『すべての女性にはレズ風俗が必要なのかもしれない(WAVE出版)』でも紹介させていただいた匿名での投稿エピソードで

2007年の創業日から1週間で利用者と偽った人が

「キャストに財布を盗まれた」と書き込みしてました。

まだ、誰からも一件もご予約が入っていなかったのにです。

今回のテーマだと偽計業務妨害ですかね。

さて、今回の改正プロバイダ責任制限法により

情報開示請求もスムーズに手続きしやすくなるということや

侮辱罪改正にも伴い罰則も強化され

「インターネット上の誹謗中傷」事案は減少するかと推察します。

なお、当グループでもこれまで数でこそ少ないですが、ばやし先生ほかグラディアトル弁護士事務所の先生方と相談の上、情報開示請求などの手続きも既に実施しております。

 

元々、悪質な書き込みをする側にメリットは全くありませんが

今回の法律の厳罰化や手続きの簡略化により

キャストになって「インターネット上の誹謗中傷」をされるケースもなくなるかと思います。

万が一、「インターネット上で誹謗中傷」された場合は

若林先生をはじめグラディアトル法律事務所の先生方と共に対処していきますのでご安心ください。

次回のコラムもお楽しみに!

御坊でした

・協力 グラディアトル法律事務所