レズ風俗法律相談Q&A『教えて!弁護士ばやし先生!』第二弾「性風俗店へのスカウトや紹介の違法性」

2022年10月25日

レズ風俗法律相談レズ風俗レズっ娘グループ代表『御坊』が、風俗トラブルに強いグラディアトル法律事務所所属弁護士ばやし先生@_devilsadvocate)こと若林翔先生に質問していく法律相談Q&Aコラムです。
今回は、前回第一弾のテーマ「風俗営業の届出」でも少し触れました「性風俗店へのスカウトや紹介の違法性」についてお聞きしてみたいと思います。

※ご注意ください!
レズ風俗レズっ娘グループでは、2007年創業以来、スカウト業者やスカウトを生業とする個人(スカウトマン)との取引は一切行っておりません!
また、当グループ関係者からキャスト採用のお声がけすることもありませんので、もし、当グループ関係者を名乗る者や当グループも紹介できるという者から、路上やSNS上でお声をかけられたりした場合は直ぐに当店までご一報ください。

前回は、レズ風俗に面接に行って、系列の男性向け風俗への在籍を促したり、AVプロダクションなど別業種へ紹介されるといった場合、違法性が高いということを知りました。AVや性風俗店を紹介するスカウトやスカウト会社も違法となる可能性があるのでしょうか。

はい。AVや性風俗を紹介するスカウトやスカウト会社は違法です。

スカウトは違法

職業安定法(職安法)は、「有害な業務に就かせる目的で、職業紹介、労働者の募集若しくは労働者の供給を行つた者又はこれらに従事した者」について「1年以上10年以下の懲役又は20万円以上300万円以下の罰金に処する」としています(職安法63条2号)。

紹介する人の属性は、同条の違反になるか否かに関係しません。

法が定める「有害な業務」とは

具体的に何が「有害な業務」となるかについてですが、裁判例は、社会一般の道徳観念に反する業務であるとしています。そして、労働者保護、善良な風俗の保護という職安法63条2号の趣旨から、アダルトビデオやソープランドはもちろん、いわゆる本番のないデリヘルなどの性風俗であっても「有害な業務」にあたるとしています(神戸地裁平成14年7月16日判決)。
職安法上の「有害な業務」についての詳細は、以下の記事もご参照ください。

職安法が禁じている行為には、有害な業務の「紹介」が含まれておりますが、スカウトやスカウト会社は女性にAVや性風俗店という職安法的には「有害な業務」に就くことを紹介、あっせんする立場になります。そのため、スカウトやスカウト会社が女性にAVや性風俗店を紹介する行為は、「有害な業務」の「紹介」をしているということになるでしょう。
実際に、スカウトやスカウト会社が有害な業務を紹介したとして逮捕され、有罪になっているケースが多くあります。

―(個人的には、きちんと届け出して納税しているお店も含めて「有害な業務」といわれても納得できないといった点もありますが…)

最近は路上でのスカウトだけではなく、SNSなどネット上でスカウト行為をしているケースがあるということをみかけしました。こちらも同様でしょうか。

はい。同様です。

ネットスカウトも違法

職安法は「対面で」や「路上で」など、場所や方法を特定していません。また、先ほど申し上げた公衆道徳・善良の風俗の維持という趣旨からしても、路上でのスカウトとネットでのスカウトの場合は違いがないといえるので、有害な業務の紹介となります。

実際、数は多くないですがネットスカウトが逮捕されている事案もあります。もっとも、路上とネット上で異なる部分もあります。それは、路上スカウトの場合のみ、各都道府県は迷惑防止条例違反になりうるという点です。

東京都の迷惑防止条例では

たとえば、東京都の迷惑防止条例では、公共の場所において、不特定の者に対し、性風俗店などの勧誘(スカウト)行為を禁止しています(東京都迷惑防止条例7条5号イ、同上6号)。

「公共の場所」と明示してありますので、このような規制のある地域の路上などでスカウト行為を行うとこれらの条例違反にもなります。

路上、SNSを含めたスカウトマン・スカウト会社の違法性についての詳細は、以下の記事もご参照ください。

いわゆるスカウト会社やスカウトマンに頼る女性側のメリットや考えられるデメリットを教えてください。

スカウトを頼る女性側のメリット

メリットに関しては、きちんと女性側と店側とのニーズをマッチできるような信用できる人であれば、お互いウィンウィンの関係が築けるということでしょう。

また、女性の中には、頻繁に在籍店を変える方もいるかもしれませんが、そういう方の場合、スカウトとの信頼関係があれば、スムーズに自分のニーズに合ったお店に移籍できるというところもメリットになるかと思われます。

ただし、このようなニーズをマッチングさせること自体国が、法律上良くないと考えているので、スカウトをする側は違法行為を行うリスクを負ってしまうことになります。

スカウトを頼る女性側のデメリット

デメリットに関しては、女性からしたら、悪質な業者に食い物にされてしまう可能性はあります。

また、店の側から見ると、スカウトを介して紹介を受けていることで、有害業務の募集をした又は有害業務の紹介の共犯となり職安法で逮捕される可能性はでてきます。

もちろんスカウトからしたら、違法行為をしていることになってしまうので、逮捕されるリスクを負うことなります。

もし性風俗店在籍のスタッフさんが、SNSなどのネット上や路上でスカウトした場合は問題ありますか。

自分のお店の求人の場合には、有害業務の「募集」が問題となります。

有害業務の「募集」とは

「募集」とは、「労働者を雇用しようとする者が、自ら又は他人をして、労働者となろうとすることを勧誘すること」です(職安法4条5項)。

さらに裁判例は、「勧誘」があったとうことができるためには、「労働者となろうとする者に対し、被用者となるように勧め、あるいは誘うなどの働きかけのあることが必要であって、面接のなかでこのような働きかけをしたり、殊更雇用(労働)条件を偽るなど特別の事情がある場合は別として、……契約締結の際における単なる面接や雇用(労働)条件の告知など労働契約締結に当然伴う行為は、労働者となろうとする者の意思決定に事実上影響を及ぼすことがあっても、なお勧誘に当たらないと解する」と判示しています(大阪高裁平成3年5月9日判タ774号269頁)。

募集にあたらないケース、あたるケース

つまり、はじめから面接先のお店で働こうという意思を自らもってやってきた女性に条件を説明したり、契約に必要な手続きを求めたりすることは、募集にはあたりませんが、それ以上にお店で働くように働きかけたりしたら、募集となるということです。
ですので、女性の方で自分からお店を見つけて応募してきた場合に、その女性を面接したような例でないと募集と判断される可能性があります。

実際、先ほどの事例では、キャスト2名の募集行為が問題となりました。
2名は自分からお店を見つけて面接を受けたのですが、1名を採用して、もう1名は一旦不採用としたものの人出が足りなくなったため、”後日電話をかけて採用”した事例でした。
この事案では最初の女性に関しては募集にあたらず、2番目の女性に関しては募集にあたると判断されていました。

性風俗店在籍のスタッフさんが、SNSなどのネット上や路上において、スカウトをする行為は、勧誘に該当し、募集に該当すると判断される可能性が高いでしょう。

職安法の有害業務の「募集」についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。


また、路上でスカウトした場合は、先ほど申し上げた通り、職安法違反のほかに条例違反となる可能性があります。

風俗店の求人でよく紹介謝礼制度のような宣伝文句をみかけたことがありますが、在籍している女の子がお友達などをお店に紹介した場合はどうでしょうか。

これに関しても、誰が有害業務を紹介したかによって犯罪が成立するか否かを区別していないため、職安法63条2号違反となります。
また、お店としても謝礼を払うので女の子を使って勧誘していることになりますので、お店の経営者も職安法違反となってしまう可能性があります。

ーありがとう御座いました。

まとめ

これまで「スカウト(違法行為をしている業者)に頼らないとキャストを集められないようなお店ってどうなの?」って単純に思ってました。
また、個人的にはSNSでみかけるようなキャストさんが堂々と「私の担当(スカウト)はこの人です」みたいなツイートをみかけては「大丈夫なのかな?」なんて疑問に思ってましたが、今回、林先生のお話を聞いて、女性側の立場からいうと信頼している人からの紹介というのは、罪悪感より安心感が勝ってしまっているのかなと思うのと同時に、もしかしたらお店側も女性も「スカウトという行為自体が違法ということをご存知ない方もいるのかな?」と少し不安になりました。

なお、業界でも「レズ風俗店」と謳って面接に来させて、男性向け性風俗への在籍やAVプロダクションへの斡旋をうながすような悪質レズ風俗店も存在しております。


個人的には、どんな業種やお仕事であれ、そこで働きたいという方は、他人任せではなく自分自身で見極めることも重要だと考えます。

と、いうわけで

次回のテーマは『性風俗店の盗撮被害』について!

お楽しみに!

御坊でした

・協力 グラディアトル法律事務所